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And the Cannons of Destruction Have Begun... / WARLORD
失恋船長 ★★★ (2025-07-07 01:30:56)
レーベル元である、Metal Blade Recordsの戦略なのか、いきなり無観客のステージでライブレコーディングを敢行。それをビデオとして販売。アナログ盤としてリリースされた音源の方はサントラ盤という変化球を投じる。どうして、こんな形でデビューを迎えたのかは分からないのだが、彼等の神秘的な音楽性を生かした演出ならば、失敗と言えるだろう。

しかし分からない訳ではない。今作がリリースされた時期は1984年、シーンにも地殻変動が起こり、彼等のようなバンドよりもキャッチーでド派手はルックスを武器にした刺激的な歌詞を歌う毒気満載のバンドがシーンに流れ出す目前でもある。
とにかく、この魔術的な世界観がティーンエージャーに受けるとは思えないというのが正直な感想。こういう音はマニア向けだ。しかし、メロディの質の高さ、深みのあるアレンジと構成力。パフォーマンスも当然ハイクオリティとライブ演奏としては素晴らしいのだが、やはり馬鹿げているという思いは拭えない。

しかし、それはを鑑みても個人的には愛するべき音楽性だし、この拘り抜いたサウンドには敬意しかない。VHSの方も、キーボードプレイヤーのSentinelはいないことになっている。まぁ、当時のシーンではキーボードプレイヤー=軟弱なバンドというネガティブは感覚があった。
LOUDNESSも渡米後のアルバムにはキーボードプレイヤーが参加しているのだが、幾度目立たない。他のメンバーがプロデューサーに反発。キーボードプレイヤーの音を最小限までに絞り、自分たちの音を最大限に上げたという発言が普通に受け入れられる。これは1988年とかのお話。それが1984年ではね。今話題のサバスもジェフ・ニコルズは最後まで正式メンバーにはなれなかった。

あのブラックサバスにキーボードプレイヤーが正式に採用されるいうアレルギーは確実にあったろう。これも時代だが、キーボードプレイヤーなくして、このドラマは積み上げられない。作曲面でも確実に貢献したダイアン・コルナレンスことSentinelさんの素晴しいパフォーマンスに目を細めます。


NWOBHMという新しい波を受け止めたアメリカンロックの凄み。そのドラマはあくまでも神秘主義を貫き、聴き手を霧深い森の奥へと誘う。その森野中にたたずむ怪しげな洋館、そこに足を踏み入れる強烈な不安と、聴き手はそんなドラマの当事者になるかの如く、この壮大な世界観に没入出来る。まぁ凄い説得力のある音ですよ。

叙情的なメロディを紡ぐギター、そしてパワフルなリズムを刻むドラム。歌声もシットリとしており、このサウンドにはジャストフィットと言えるだろう。RAINBOWスタイルも嫌味無く取り込み、リッチー・ブラックモア的志向は随所に顔を出す、ジプシー的なメロディも同様のアイデアだろう。全てに無駄がなく完璧と言えるほど溶け込んでいる。マーク・ゾンダーことThunder Childのパワーヒッティングドラムは、さしずめコージー・パウエル同様の役割を果たしていると言えるほど、随所に、その屈曲なドラミングで魅了してくれる。

プロフェッサーと言いたくなるギタリストも後のホンモノの大学教授になるのだから驚きだ。彼の知性が、女子供に媚びを売ることを拒絶したのだろう。変則的なデビューと、次に繋がる作品をコンスタントにリリースできなかったのが残念だが、このバンドが今作の世に送ったのは紛れもなく素晴しい出来事であり、強烈なインパクトを残してくれた。

今配信されているのは、Global Rock Recordsから出たモノであり、貴重なデモ音源が聴けますので是非ともトライして欲しいですね。
素行不良を原因にユーライアヒープをクビになった男、Steff FontaineことSteve Fontaineの貴重なパフォーマンスも楽しめます。レア曲も豊富なのでファンならば要チェックでしょう。

でも本編なんですけどね。色んな意味で伝説を築いた幻の一枚。日本盤もあるのですが、ボーナストラックの豊富さで配信盤に軍配が上がるでしょうね。 

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